Dreamerは夢の中

頭にあることの整理箱。

『カルテルランド』

映画の紹介。

今まで映画を見た中で圧倒的な存在感を持つもの。

これを見てから、フィクション映画を見ても薄い感じがしてしまう。

以下は、以前FBであげた時の文章を少し編集したもの。

 

 

カルテルランド』

〜正義が揺らいでも、悪は揺らがない〜

 

 一体、どう表現すれば、このドキュメンタリー映画の衝撃、戦慄を伝えられるのでしょうか。見終わった後、お盆の思い出も全て吹っ飛び、しばらく呆然としていました。

 

 あるラジオで「シックスセンス以来の衝撃の結末」と言っていたそうですが、私にとっては比較にならないくらいの衝撃でした。
 
 

 

 話は、メキシコの痲薬”戦争”について。
大きな力を持ち、警察や政府とも癒着し、一般市民をも襲う痲薬カルテル(マフィア)と、それに立ち向かう人々。
 
 

 

 メキシコでの痲薬を巡った抗争は、調べればわかりますが、かなり深刻でかなり残虐です。
映画の冒頭では、みかじめ料を払わない農場主に対し、見せしめとして何の罪もない労働者が、子供も含めて殺されたという話がありました。


 

 この映画の主人公は、こんな状況に立ち上がる1人の町医者です。
 『殺されるのを待つか、銃を買って自分を守るか?』と住民にせまり、自警団を作って町からカルテルを追い出そうとします。


 

 前半の印象的なシーンがありました。
武装してある町にやってきた自警団を、軍、警察が違法行為だと制止し、武装解除しようとします。
しかし、軍や警察に”住民が”対立します。今まで軍や警察は住民を守って来なかったと、我々が自分で戦うのだ。と住民が軍に対して訴え、自警団に武器を返させ、ついには町から軍を追い出してしまいます。


 

 自警団には、仲間がどんどん集まり、カルテルの支配から町をどんどん解放していきます。
そんな彼らは、市民を守る英雄として迎えられて行きます。


 

 そんな英雄的自警団ですが、肥大化していくにつれ。どんどん雰囲気が変わっていきます。

 
様々な人間が参加し、暴走を始める自警団。


 

 自称”警察官”を容疑者として拘束し、銃を突きつけて尋問する自警団員。

 
肥大化した自警団を取り込もうとする警察署所長。


 サンタクロースのような風貌で、にこやかな幹部の思惑。


 英雄と称えられる自警団リーダーの意外な人間性・・・


 

 
『正義は揺らぐが、悪は揺らがない』


 『善と悪の境界線は、今までになく不鮮明になった。』
 


 

 そして、痲薬製造現場でのインタビューから発覚する、衝撃のラスト…


 

 『事件や災害などで生存への不安や恐怖の感情を刺激されたとき、人は一人が怖くなる。多くの人と連帯したくなる。群れ。これは人類の本能。
ただし、群れにはリスクがある。暴走。
〜略〜
自衛と一体化した正義が、悪(獲物)を求めて暴走を始める。
〜略〜
決して昔話ではない。そして遠い国の話でもない。日本は集団化しやすい。〜略〜 愛する国土を守るため、愛する人を救うため、僕たちは同じ過ちを何度もくりかえしてきたことを、この映画は教えてくれる。』(森達也;パンフレットより)

 

 字で読むと、昔から何度も繰り返されて来た、よくある話だと思うかもしれない。

 ただ、これがドキュメンタリー映画だということが信じられません。

 迷うことなく、今までで一番衝撃を受けた映画でした。

 

*この映画、暴力的なシーンが多く、被害に遭った遺体のグロテスクな写真も映し出されます。

興味がある人は注意してください。